最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)13号 判決 1949年3月01日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
本件上告理由は添付の別紙記載のとおりである。
人身保護法による救済の手続は、国民をして現に不当に奪われている身体の自由を迅速且つ容易に回復せしめることを目的とするものであるから、裁判所はこの法律による救済の請求があつたときでも、被拘束者が身体の自由を回復したときは、審問手続を経ず直に決定をもつて請求を棄却するのである。(人身保護法第一一条人身保護規別第二一条第一項第五号)すなわち、被拘束者がすでに釈放されて身体の自由を回復している場合には、本法による救済を求める必要はもはや消滅し、権利保護の利益を欠くからである。(なお此事件は実質においては普通の民事訴訟の如く既存の法律関係を将来に向つて確定することを目的とするものではなく只現に不当に身体の拘束を受けて居る者を釈放することだけを目的とするものだから事実審の最終口頭弁論の時における事実関係に拘束されるものではない)本件において上告代理人の陳述するところによれば、上告人本人(被拘束者)昭和二四年一月一八日保釈許可となつて同月一九日拘束者の東京拘置所を出所釈放されて身体の自由を回復したことが明かであるから上告人は本法による救済を求める利益を欠くに至つたものである。
されば、上告理由各点について判断するまでもなく本件上告を棄却すべきものと認め人身保護規則第四二条第四六条民事訴訟法第九五条第八九条に従い主文のとおり判決する。
右は全裁判官一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)